ワークショップ

最終更新日:2023/05/19

11.「Think Globally Act Yamubally~地球規模で考え、行動はやんばるから」

発表者:東 竜一郎(辺土名高校非常勤講師)・上原 蓬(辺土名高校環境科3年生)

みなさんは、全国でも唯一無二と言っても過言ではない、野外での自然体験学習に特化した高校が沖縄にあることを知っていますか。それが沖縄島最北端、世界自然遺産「やんばる」地域にある沖縄県立辺土名高校です。本校は今年で創立78周年を迎えた伝統校ですが、近年はやんばる三村(国頭村、大宜味村、東村)の過疎化の影響などで生徒数の減少が顕著でした。2001年には環境科を開設、フィールド学習をカリキュラムの中に取り入れ、研究分野などで一定の成果は上げてきましたが、それでも生徒数の増加にはつながりませんでした。そこでサイエンス部を中心に2015年辺りから取り組んできたのが、①学校生き物博物館を活用した外部に対する環境教育、②地域の企業と連携したエコツアーガイド有償インターンシップ、③その道のプロ(専門家)と連携した共同研究、④世界自然遺産登録に向けた地域活動への積極的な参加、などです。これらの活動は新聞やテレビなどマスコミにも多く取り上げられ、昨年度から今年度と入学者の増加傾向が見られております。

また、今年の8月には第24回全国高校生自然環境サミットが本校で開催されます。これは、やんばるの自然を体験しながら交流し、互いの地域の自然や地球規模の環境問題についてもディスカッションして、自分たちにできることを考え、発信するという企画です。素晴らしい大会にできるように準備を進めています。

 これまで、世界自然遺産登録に向けた活動に積極的に参加してきましたが、これから、世界自然遺産となった「やんばる」の高校として何ができるのか、何を望まれているのか、「5年後、10年後のやんばる」についてみなさんと共に考えていきたいです。

あなたの団体のリーガルディフェンスは大丈夫ですか?:オンラインアウトドアリスクマネジメントコースの紹介

発表者:岡村泰斗(株式会社backcountry classroom)

やらなければならないとわかっているけど、何をしてよいのかわからないリスクマネジメント。そもそも野外事業は、リスクがあるから人気があるのです。

野外事業の民間スタンダードや国家基準がある国では、基準が明確で、雛形もあるので、安心して参入できます。WEAも、団体公認基準はあるのですが、そこにたどり着くまでは、指導者個人の資質にフォーカスし、団体のリスクマネジメントは自助努力。多種多様なアクティビティを含む野外業界は、統括団体間での情報交流も限界がり、業界横断的な基準づくりは極めて困難。

このような我が国の状況を打開すべく、この度世界50カ国で採用されている、アメリカビリスター社のオンラインアウトドアリスクマネジメントを、この冬日本でもいよいよローンチします。国内屈指のアウトドアリスクマネジメントの研究者、実践者を講師に揃え、アメリカの負けないコースを提供します。

このワークショップでは、コースの全体像の紹介と、特別に、コースの一部を切り抜いて、皆さんの団体のリスクマネジメントチェックを行おうと思います。また、評価結果に基づき、足りないところの情報交換を通じ、フロアー全体でリスクマネジメントスキルをアップしたいと思います。

リスクマネジメントは、みなさんの参加者、ステークフォルダー、業界を守るだけではなく、みなさんの団体を存続させ、ミッションを達成することのできる、唯一無二のツールです。

「海辺の野外体験と教育から、未来のツーリズムに繋がる人作りを考える」

発表者:星原貴保(一般社団法人 沖縄県美ら海教育学校 代表理事)・阿部健司(一般社団法人アクアスポーツインターナショナルアカデミーASIA 理事 事務局)・遠矢英憲(名桜大学人間健康学部 スポーツ健康学科 上級 准教授)

野外体験の教育的効果は山の分野に関する事例は数多く、残念ながら海に関する分野の教育手法や機会はまだまだ少なく感じています。

山や川、マングローブ湿地帯等、亜熱帯海洋性気候が創り出す沖縄の多様な自然環境がある中、海はとても大きな野外体験フィールドの一つとなります。特に沖縄では代表的な野外体験フィールドである「海での体験事例」を元に、様々な手法による海辺の野外体験の教育的効果や沖縄の海の魅力についてご紹介し、更には皆様と海での体験活動の意義やその効果を考察し、将来的には「海も野外活動の一フィールドである」との理解をしていただけるよう、建設的な意見交換ができればと考えております。

学校教育、企業研修、ツーリスト等、幅広く海洋教育を通しての人作りに取り組んでいる中で、スノーケリングやスクーバダイビングを用いた教育等、我々の事例をご紹介しながら、マリンスポーツを通じて、どのようなリーダー育成の仕方があるのか?未来に繋がる人作りとは、どういったものなのか?山の分野の皆様との繋がる可能性等、海も山も分け隔てなく次世代の人作りについてディスカッションすることで「柔軟性と新たな発想」を見出し、それらを多様なフィールドで演出することでより効果的な野外教育を皆様と共に創造していきたいと考えております。

また、各地のメジャーフィールドでは同様にオーバーツーリズムや環境問題等の課題が山積しておりますが、多くの野外活動団体が実践している啓蒙活動や入口対策が必要であると同時に、実際にどのような対策を講じているのか、現地の受け入れの難しさや課題なども含めて解決に向けての意見交換が出来ればと思います。

さらに、野外活動で社会の課題を解決していく方法とはどういったものなのか、野外活動の価値を上げる社会を作り出すためにはどうすれば良いのか、そのために必要な各地で将来のツーリズムを担う新たな人作りに繋げるためにはどうすれば良いのか等、野外活動を通じて夢や希望のある社会を構築するための、ワクワクするような「リスポンシブルツーリズム」や「サステナブルツーリズム」について、皆様と一緒に考えていきたいと思います。

「世界自然遺産やんばる地域の新しいサステナブルツアー「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO」にLNTを! 〜 Don`t ではなくLet`sな思考で、やんばる型サステナブルツーリズムの未来をみんなで考えよう」

発表者:妹尾望(やんばるリンクス/やんばる案内人Tida-Smile)

このワークショップでは、2021年7月に世界自然遺産に登録された「やんばる地域」での新たな取組み「保全体験型ナイトツアーAKISAMIYO」※1をご紹介しながら、参加者の皆様と、やんばる型サステナブルツーリズムの未来について、考えていきたいと思っています。

AKISAMIYOツアーは、従来の自然観察ツアーとは異なり、「やんばるの森」の現状を調べる環境モニタリング調査を体験しながら、夜の森で希少な動植物や星の観察、漆黒の闇の体験、街の喧騒とは違った自然の音など、五感を通してやんばるの森を体験してもらうツアーです。

このツアーは、世界自然遺産地域の保全と利用のバランスに配慮したガイドラインに基づいて実施され、また参加者には責任ある立場でツアーに参加することを誓約する「やんばる約束」に同意してもらったり、ツアー代金の一部(500円/人)を「やんばる自然環境保全金」として、やんばるの森の保全活動に活用したりするなど、自然環境に配慮したツアー運営を目指しています。

一般的に、ガイドラインや誓約書などは、「〜してはならない」という禁止事項によって、ガイドや参加者にルールを課してしまいがちです。そして、AKISAMIYOツアーも、その様なルールがいくつかあります。そこで、参加者の皆様の知恵と経験を存分にお借りして、LNTのDNAをこのAKISAMIYOツアーに取り入れるとともに、世界自然遺産やんばるでのサステナブルツーリズムについて、意見交換したいと考えています。

「我々はそれをなぜ良きものとして体験するのか -体験の深みはどこからやってくるのか?-」

発表者:阪田 晃一(神戸YMCA)

現代においては、多くの人間が「豊かな自然環境の中での、(孤独ではなく)誰かと何かを一 緒に体験すること」に、重要性を感じている。 生きがいを感じている。
つまりある体験を良きものとして体験している。たとえその体験が学習され、血肉となっていくように促進されているもの(例えば、安全を守るのは最優先だとして、道迷いや参加者同士のコンフリクトなども、良い教材だとされる。)だとしても、指導者も含めてその体験は良きものだという「前提」に基づいて事に当たっている。
では、私たちは遠征やキャンプでの体験を、なぜ「良きもの」として体験するのか? ある体験が良きものとして認識される時、その良きものの外に何があるのか? 参加者とのディスカッションを通して考察を深めたい。

*上記は紹介文の一部を抜粋しています。
天然知能やクオリアへの論拠等を含む全文は下記URL先のPDFより参照ください:https://drive.google.com/file/d/1aBMc6uynluwXy1pNaiP5LMfkqefudV2m/view?usp=drivesdk

「見えないチカラ ~多様性を見つめるチカラ持てていますか?~」

発表者:小林幸一郎(NPO Monkey Magic)・林綾子(びわこ成蹊スポーツ大学)

WEAの創始者である、Paul Petzoldtは、指導者の資質として参加者理解を重要視していました。どういったバックグラウンドの人なのか、どういった活動をしたい人なのか、参加者をよく知ることが指導の始まりであり、個性や多様性豊かな集団形成がより教育的な価値を生み出すと考え、多様なバックグラウンドの生徒やインストラクターをリクルートしていたそうです。グローバル化・多様化の時代において、指導者として、参加者個々の個性や多様性を理解したうえで集団を形成する力はますます重要になっているのではないでしょうか?では、アウトドアリーダーとしての、多様性を見つめるチカラとはどのようなものでしょうか?持っていると自信を持って言えますか?

本ワークショップでは、フリークライミングの普及を通じた視覚障害者をはじめとした人々の可能性を大きく広げ、多様性を認め合うことのできるより成熟した社会の実現を目指す活動をNPO法人モンキーマジックの設立者であり、自身も23年3月までパラクライミングの競技者として大会出場を続けていた小林幸一郎の活動の紹介や、彼の持つ“見えないチカラ”による多様性の理解について、アクティビティを用いて参加者のみなさんと共に考えることを目指しています。アウトドアという5感をフルに活用する活動には多様性理解や普遍的価値の共有のチャンスが溢れています!

アウトドアリーダーとして、多様性を見つめるチカラを身に付け、アウトドアの特性と参加者の多様性を活かすことができれば、これからの時代に求められる新たな体験の価値を生み出す可能性が広がるのではないでしょうか?

「LODでリーダーシップを育む」

発表者:林 健児郎(大阪YMCA)・島崎晋亮(株式会社信州アウトドアプロジェクト)

WEAでは野外指導者に必要なスキルとして、「野外生活技術」「遠征計画」「リーダーシップ」「リスクマネジメント」「環境に対する責任」「教育」の6つを柱とし、全てのスキルを横断するものとして「判断」を挙げ、WEAカリキュラムにおいて最も重要なスキルと位置づけています。本ワークショップでは「リーダーシップ」を取り上げ、リーダーシップの定義やリーダーシップ論、リーダシップスタイルなどの基礎的な内容を理解するとともに、Leader of the Dayシステム(以下、LOD)を体験し、リーダーシップを育む方法を体感することを目的としています。

 指導者として経験を積んでくると、自分自身のリーダーシップについて振り返る機会が多くなります。自分のリーダーシップはこれでいいのかと自問したり、もっとリーダーシップを身につけたいと思ったりすることもあるでしょう。また、スタッフや参加者のリーダーシップをどのように育成したらいいか、悩むこともあるでしょう。

 「野外体験(キャンプ)でリーダーシップを育くむ」とか、「野外体験(キャンプ)でリーダーシップが身につく」ということは昔から言われてきました。野外指導者としては、野外体験の効果としてそうあって欲しいと、みなさん思っていることでしょう。しかし、ただ野外体験させればよいかというとそうではなく、指導者がリーダーシップの定義だったり、リーダーシップ論やスタイルを理解し、戦略的にアプローチしないと、なかなか身につかないものです。

 WEAのLODは、リーダーシップを育成するのに非常に効果的です。リーダーはグループが目的を達成できるよう支援し、その方法やタイミング、プロセス等について、グループメンバーからのフィードバックを受けることで、リアルなリーダーシップを育んでいきます。日毎に交代するリーダーは、それまでのリーダーに対するフィードバックを自身のリーダーシップに反映させたり、リーダー経験者がサブリーダーとしてリーダーを支援したり、もう一度リーダーにチャレンジしていきます。本ワークショップでは、模擬的な遠征場面を設定し、参加者のみなさんにリーダーやその他の役割を担っていただき、LODを体験していただきます。

参加者の皆さんのリーダーシップに対する思いや現状を共有しながら、WEAカリキュラムを体感して学ぶ時間にご期待ください。

「フロントカントリーとは?」〜自転車旅とLNT/キャンプとLNT

発表者: 小口 良平 合同会社トビチカンパニー「grav bicycle」
・ 久保田 雄大 合同会社Waqua

私、小口良平は自転車で約8年半、世界160ヶ国、約15.7万kmを走りました。帰国後は、サイクリングツアーガイドとして、キャンプツーリング(野外冒険教育系)とアドベンチャーツーリズム(観光系)に取り組んでいます。自転車はフロントカントリーやバックカントリー、また街中を移動し続けます。なぜ、自転車旅にLNTが必要なのかを考える、初心者向けのワークショップを開催したいと思います。
私自身が世界自転車旅で地球に与えてしまったインパクトの強さを猛省しています。世界自転車旅の風景写真とともに、参加者の方とディスカッションするワークショップになります。
私のミッションは「すべてのアースサイクリストにLNTを “LNT as standard equipment for every cyclist.”」です。
今回のワークショップの中で、ちょっぴりリラックスしたい方向けの内容になります。

Environmental course of LNT

ファシリテーター:
Da Mai / ダ・マイ

LNTの環境コース
LNT中国は、山、湿原、川、都市公園などの観光地で、生態系の特徴に基づいた90分のLNT体験コースを開発しました。このコースのほとんどは、約800-1200mのトレイルを歩きながら行います。その中で、LNTの原則、ゲーム、課題、ゴミ拾いなどを、ルートの生物多様性、生態的多様性、文化的多様性に基づいて、「導入」「構築」「行動」「共有」の4つのモジュールで行います。参加者と体験を共有した後に、LNTの体験証明書が渡されます。

My workshop is:Environmental course of LNT

1. ChinaLNT will design a 90 minute LNT experience course based on the ecological characteristics of the destination area (such as mountains, wetlands, rivers, and urban parks), with the most representative walking section (approximately 800-1200 meters).

2. We usually add LNT principles, LNT games, LNT tasks, and trail garbage cleaning work in four modules of “import build action share” based on the biodiversity, ecological diversity, and cultural diversity characteristics of the route.

3. After participants share their feelings about the event, they will be awarded an LNT activity certificate.

LNT Awareness Workshop

ファシリテーター:
Lito De Veterbo / リト
Leave No Trace Master Educator, (Mister LNT)

LNTアウェアネスワークショップは、一般市民がLNTの野外倫理を学ぶために計画されたエントリーレベルのコースです。その内容は、特定の環境に合わせたり、参加者の特性に応じて調整されます。参加者は、こども、大学生、野外指導の専門家など、LNTを学び環境へのインパクトを最小限にすることに興味のある全ての人が対象です。このワークショップでは、LNTの原則を、楽しいゲームや参加者との交流を通じて体験します。ワークショップの最後には、環境に対する責任を理解することができます。

1.事前の計画と準備/2.影響の少ない場所での活動/3.ゴミの適切な処理/4.見たものはそのままに/5.最小限の焚き火の影響/6.野生動物の尊重/7.他のビジターへの配慮

ボーイスカウト式!子ども向けLNT

発表者:
西沢 ゆか
Boy Scout of America, Crew20 Advisor

アメリカでは国立公園をはじめ広範囲に活動が行われているリーブノートレースですが、日本ではリーブノートレースジャパンが国際ブランチとして立ち上がったところで、日本でも子ども向けの教材やアクティビティを充実させてほしいという要望が多いのが現状です。今後、日本でリーブノートレースが普及するにあたり、いろんな場所で子ども向けリーブノートレースを活用していくことがますます重要になってくるでしょう。

 そこで、本ワークショップでは、「ボーイスカウト式!子ども向けLNT」を実際のプログラムを用いながら説明します。実は、アメリカのボーイスカウトでは、1955年に「Outdoor Ethics(野外倫理)」をプログラムに取り入れて以来、自然保護の教育活動を積極的に行ってきました。リーブノートレースについても同様にボーイスカウトのランクや表彰の要件として組み込まれています。子どもと自然の関わりを大切にしながら、ボーイスカウトではどのようにリーブノートレースを実践しているのかを紹介します。それぞれのランクごとに課題があり、その指導マニュアルもありますが、それに限らず、アウトドアプログラムのさまざまなところでリーブノートレースを取り入れて子どもたちに伝えています。

また、リーブノートレース各7原則ごとの「子ども向けアクティビティ」も紹介します。キャンプやハイキングといった野外活動だけでなく、ご家庭や学校でも使えるリーブノートレースを一緒に見ていきましょう。こんなところにもLNTが!と新たな発見があるかもしれません。

その後、会場のみなさん、及びオンラインで参加のみなさんにも、アクティビティを実際に体験してもらい、子ども向けリーブノートレースではどんな点に気をつけなければならないのか考える場とし、より深い理解をしていただければと思います。

 野外活動を行っていらっしゃるリーダーの方々、ユースリーダーの方々、学校や塾などの教育関連の方々、親子での参加も大歓迎です。「ボーイスカウト式!子ども向けLNT」を楽しみながら一緒に体験しましょう。